選挙ポスターって必要ですか ?
ご訪問いただきありがとうございます。今日は選挙ポスターについて少し書いてみようかと思います。テーマはズバリ、選挙ポスターは必要なのか ? 結論から言うと、私は「紙の」選挙ポスターは無くすべきだと思っています。以下、その理由です。
理由① 理想と現実との乖離
選挙ポスター =選挙運動用ポスターとは、条例により各市町村の選挙管理委員会が設置したポスター掲示板にのみ貼り出せるもので、私が立候補した宮城県議選の青葉選挙区の場合、 300カ所以上の掲示板が用意されました。
掲示板が設置される場所は、各選管が投票区ごとに人口密度や、地勢、交通など地域の事情を総合的に考慮して選ぶものとされていますが、実際には公共施設や公用地などに設置場所が限られるため、どうしても偏りが生じてしまいます。
その結果、人通りの多い場所なのに公共施設がなく掲示板が設置できなかったり、逆に人里離れた山奥の公用地に掲示板が複数設けられたりすることも少なくありません。私もポスターを貼りながら「なんで?」と首を捻る機会が多々ありました。
これは公選法や政令などが求める理想と、掲示板の設置場所確保という現実の間に乖離が生じているからで、ざっくり言えば時代遅れの法律になってしまったのだと思います。その結果、有権者に情報を届けるというポスター掲示の目的が、単に法令の基準を満たすためになっているのではないか。これが、私が紙の選挙ポスターは無くすべきと考える1つ目の理由です。
理由② 選挙関連費用の節減
先日の記事にも書きましたが、選挙ポスターの作成は公費で賄われ、私が出た青葉選挙区では 1人あたりの上限が 1,049,510円に設定されました。この公費負担は当然、紙のポスターをやめることで削減されるばかりか、掲示板の作成・設置・撤去費用も不要となるので総額ではかなりの費用が節約できます。紙の選挙ポスター不要論の2つ目の理由です。
理由③ ポスター貼りからの解放
選挙ポスターを貼る作業はとても労力を要し、候補者にとっても大きな負担となります。政党などの組織的な支援が受けられる候補者は別として、そうした地盤のない人にとっては投票区全ての掲示板にポスターを貼るのは最大の関門かもしれません。
私は1人で300カ所余りの掲示板を回り、自分の力だけで貼ろうとしましたがそれはあまりにも無謀でした。選管から提供される掲示板の所在地は地番表示がほとんどなので、カーナビを使っても住所検索できず、地図も当てになりません。支援者がいれば選管が公表する図面を事前に確認し、ゼンリンマップのような詳細な住宅地図に落とし込んでおくこともできますが1人では不可能です。
また、ポスターを貼る作業も単純労務者として人を雇うことは可能だとする考えと、ポスター貼りそのものが選挙運動になりうるとする考えがあり、実際にそうした解釈をめぐって事件化したケースもあります。とくに私のように候補者1人しか実務担当者がいない場合は、選挙違反の疑いを持たれること自体を避けるしかなく、 (選管の意見も踏まえて)ポスター貼りを外注する選択には至りませんでした。こうした物理的・心理的負担から解放されることも、紙の選挙ポスターを無くすべきと考える理由の一つです。
選挙ポスターのあり方に一石を投じた都知事選
先の東京都知事選挙では過去最多の56人が立候補し、掲示板の枠が足りなくなったり、候補者と直接関係のないポスターが貼られるなど想定外の出来事が相次ぎました。こうした事態を受け、与野党は先ごろ公選法を見直す作業に着手しましたが、私はもっと根本的に、紙のポスター廃止について議論すべきだと思います。
紙をやめて電子ポスターの検討を
もっとも私は、候補者の顔や、氏名、政策、主張などを簡潔に表現し、一目でアピールできる選挙ポスターの役割を否定するものではありません。たとえインターネットを活用した情報発信が増えようとも、高齢者などネット情報に接触できない人たちは一定数おり、選挙ポスターが公平な選挙運動の維持に寄与してきたことは認めます。
ただ、紙のポスターを掲示板に貼る現在の方法では、さまざまな不都合が生じることは上に記したとおりです。そこで私が代案として期待するのが「デジタルサイネージ」の導入です。現在、選挙期間中だけ設置されている掲示板を全廃し、代わりに地域ごとにデジタルサイネージを常設して対応する方法です。
平時は市町村からのお知らせや広告にデジタルサイネージを使用し、選挙期間になったら、例えば1人30秒間隔で候補者の電子ポスターを表示する。そしてそれを次々とループ表示させれば、紙のポスターの役割は十分果たせると思うのです。
電子ポスターであれば入稿はオンラインで完結します。差し替えにもすぐ対応でき、選管側の負担も軽くなることでしょう。これなら組織力や経済力の違いによってポスターを貼りきれないといった事態も回避できますし、何より私のようにポスターを貼りすぎて指に炎症を負い、二度と選挙なんか出るものかとトラウマになる人もいなくなるに違いありません。
ということで以上、選挙ポスターが必要かどうかに関する私の考えでした。ここまでお時間割いていただき、ありがとうございました。
(記事中に示した事例はあくまでも2023年10月執行の宮城県議会議員選挙のデータを基にしたもので、他の選挙では状況が異なる場合があります)